小前 亮 著『月に捧ぐは清き酒 鴻池流事始』

2021/12/26
読了。清酒の発祥となる “双白澄酒” を造った “山中(鴻池)新六” の生涯を描いた物語。信長/秀吉/家康の戦国時代に “日本一の酒” を造る事に切磋琢磨した主人公 “新六” の姿が描かれており、日本酒の製造&歴史文化の勉強になった??
P.152
「『酒が人を幸せにする』と言ったときの、師匠の笑顔が忘れられないんだ。自分の仕事で、自分のつくった物で、人を笑顔にしたい。幸せにしたい」
P.321-322
注ぎ口のついた桶を傾けると、鮮烈な酒の香りが立った。青みを帯びたギヤマンの杯に、酒が注がれる。新右衛門は杯を掲げて、陽光に透かした。ひと筋の濁りもなく、水よりも澄んだ酒だ。杯を回すと七色の光を放ってきらめく。歓声があがった。「きれいね……」はなが夢見心地でつぶやく。「ああ、これが理想の酒だ」新右衛門ははなに杯を手渡した。
P.323
新右衛門は決断を下した。透き通った酒を「双白澄酒」(もろはくすみざけ)と名付けて販売する。慶長十一年(西暦一六〇六年)のことだった。
P.348
晩年、新右衛門は月を愛でながら酒を飲むことを好んだ。はなと並んで広縁に腰を下ろし、ギヤマンの酒杯に清酒を注ぐ。月光を溶かしたような酒を軽く掲げて、香りと見た目を楽しむ。月は望月がいい。下半分にかかっている雲がゆっくりと流れて、全貌が露になる。光が増して、中庭がぼんやりと照らされる。
小前 亮 著『月に捧ぐは清き酒 鴻池流事始』https://amzn.to/3EmXHhG
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